運動率13.5%でも妊娠できました——夫の男性不妊検査の全記録【栃木・獨協医科大学】
先に、結論から書きます。
夫の精液検査の結果は、運動率13.5%(基準42%以上)、正常形態率2.3%(基準4%以上)、DFI34.68%。どれも良い数字ではありませんでした。
それでも——その数か月後にわたしは妊娠し、43歳10ヶ月で出産しました。
いま検査結果を見て青ざめている方に、まずこのことをお伝えしたくて書いています。
そして先に、はっきり書いておきます。原因は、夫だけにあったわけではありません。わたしには片側の卵管がつまっているという結果があり、年齢も41歳を過ぎていました。ふたりぶんの理由が重なって、わたしたちは体外受精を選んだ——それが正確なところです。
1. 男性不妊がわかったきっかけ——妻の検査ではなく、夫の精液検査
わたしは41歳10ヶ月で、宇都宮のクリニックに通いはじめました。
検査を進めるなかで、思わぬところに引っかかりが出ます。夫の精液検査で、運動率が基準より低かったのです。
そして先生から、「男性不妊の専門で診てもらってはどうですか」と勧められました。
💬 その場に夫がいた
その日は、たまたま夫も一緒に受診していたタイミングでした。だから先生の話を、本人が直接聞くことになったんです。
いま思えば、その場だったから断れなかったのかもしれません。でも夫は「行く」と言ってくれました。
不妊の原因は、女性側だけにあるわけではありません。WHOの調査では、こう報告されています。
📊 不妊の原因の内訳(WHOの報告)
- 女性のみに原因 41%
- 男性のみに原因 24%
- 男女ともに原因 24%
- 原因が分からない 11%
男性側にも原因があるのは、24+24でおよそ半数。決して珍しいことではありません。
それでも「まず妻が検査を受ける」という流れになりがちで、夫の検査は後回しになることが多いように思います。
2. 栃木で男性不妊を診てもらえる病院——3つの中から選んだ理由
その場で、3つほどの病院を提示されました。そのなかから選んだのが、獨協医科大学病院(下都賀郡壬生町)のリプロダクションセンターです。
📝 選んだ理由は、正直に言うと
家から近かったから。それだけです。
当時のわたしたちには、男性不妊についての知識がまったくありませんでした。どこがどう違うのか、何を基準に選べばいいのか、判断する材料を持っていなかったんです。
この選び方には、あとから「知らなかった」と思うことがありました。それはこの記事の6章に書いています。病院選びで迷っている方は、先にそこを読んでもらってもいいかもしれません。
3. 実際の検査——4種類、こんなことを調べました
予約を取り、夫と2人で初診に行きました。問診のあと、院内で採精。その後も何度か通うことになります。
受けた検査は、大きく4つでした。いずれも2024年12月に受けたものです。
① 精液検査(基本の検査)
| 項目 | 基準値(WHO2021) | 夫の結果 |
| 精液量 | 1.4 ml 以上 | 1.4 |
| 精子濃度 | 16×10⁶/ml 以上 | 25.2 |
| 総精子数 | 39×10⁶ 以上 | 35.2 |
| 運動率 | 42% 以上 | 13.5% |
| 前進運動率 | 30% 以上 | 11.6% |
| 白血球 | 1×10⁶/ml 未満 | 0.6 |
数はある。でも動いている精子が少ない——そういう結果でした。
② クルーガー検査(精子の形を詳しく見る)
精子を染色して、頭・首・尾の形を高倍率の顕微鏡で観察する検査です。
正常形態率は2.3%(基準は4%以上)。形の整った精子が、基準より少ないという結果でした。
③ ORP検査(精液中の酸化ストレス)
精液のなかの酸化ストレスの強さを測る検査です。
カットオフ値1.34に対して、夫は0.66。ここは基準内でした。
④ DFI検査(精子のDNAの傷)
精子のDNAがどれくらい断片化しているかを見る検査です。
結果はDFI 34.68%。一般に30%を超えると高いとされる範囲です。
📝 わたしなりに読み取ったこと
検査の説明書には、「DFIが高くなる原因のうち、酸化ストレスによるものが最も多い」と書かれていました。
でも夫の場合、酸化ストレス(ORP)は基準内なのに、DFIは高いという組み合わせでした。その主な原因には当てはまらない、ということになります。
※これはわたしの読み取りで、医学的な判断ではありません。数値の意味は必ず医師にご確認ください。
ここまで詳しく調べてもらえたことは、いま振り返ると価値がありました。精液検査だけでは見えないところまで数字にしてくれたからです。
💰 費用のこと
正直に書きます。支払いは夫がしていたので、正確な金額の記録が残っていません。
ただ、調べてみると精液検査は保険適用で、DFI検査とORP検査は保険適用外(自費)とされています。自費のぶんは、2つあわせて2万円台がひとつの目安のようです(金額はクリニックによって違います)。
受ける前に、どれが保険でどれが自費になるかを窓口で確認しておくと安心です。
4. 処方された薬——そして、飲まなかった現実
検査のあと、夫にはツムラ41番の漢方(補中益気湯)とクロミッドが処方されました。
ここからは、正直に書きます。
💬 夫は、ほとんど飲みませんでした
もともと薬が嫌いな人です。処方はされたけれど、ほぼ飲みませんでした。
通院自体も、やはりなかなか行きたがりません。積極的とは、とても言えない状態でした。
男性不妊の治療は、女性側と違って「本人がやる気にならないと、何も進まない」ところがあります。採卵のように、日程が決まっていて行くしかない、というものではないからです。
5. 温度差と、それでも一緒にいた理由
夫は、治療に積極的ではありませんでした。わたしがどんな治療を受けているのかも、ほとんど理解していなかったと思います。
本当は、もっと寄り添ってほしかった。
💬 知ってほしかったこと
採卵の痛みがどういうものか、知ってほしかったです。仕事をしながら通って、薬を飲んで、注射をして。それが何ヶ月も続きます。
しかも頑張れば結果が出る、というものでもありません。全部やっても、陰性のときは陰性です。
そんななかで、やれることはやってほしかった。でも、そうはいきませんでした。
不満は、たくさんありました。それでも言わなかったのは、こう思っていたからです。
💬 割り切っていた気持ち
この人の子どもが欲しいのは、わたし。そして、この人の協力がないと、その願いは叶わない。
別の人の子どもなら、欲しいとは思わないわけで。だったら、この人にやってもらうしかない。そんな割り切った気持ちもありました。
ただ——判定の日、陽性だとわかったとき、夫は涙ぐんで喜んでいました。
治療のことを分かっていなくても、薬を飲まなくても、あの瞬間の顔は本物でした。だからいまも、後悔はありません。
同じように夫との温度差に苦しんでいる方が、たくさんいると思います。「なんで自分ばっかり」と思う気持ちは、当たり前です。
正解を書けるわけではありません。ただ、言わずに飲み込んだ人がここにもいるということだけ、残しておきます。
6. あとから知った「もうひとつの獨協」
通いはじめてしばらく経ってから、通っていた鍼灸の先生に言われました。
「男性不妊なら、埼玉の獨協のほうがいいよ」
え、獨協って栃木のじゃないの?——調べてみて、はじめて知りました。
| 獨協医科大学病院 (栃木・壬生町) | 獨協医科大学埼玉医療センター (埼玉・越谷市) | |
| リプロダクションセンター開設 | 2024年1月 | 2015年 |
| 男性不妊の特徴 | 泌尿器科と産婦人科が連携 | MD-TESE(精巣内精子採取)の症例数が大学病院で国内最多と公表 |
同じ「獨協」でも、男性不妊への取り組みには10年近い差がありました。埼玉の越谷は、男性不妊治療のパイオニアとされる医師を中心に開設されたセンターです。
宇都宮から越谷までは、車で2時間ほど。東京のクリニックに通えるなら、十分に通える距離です。
💡 病院を「近さ」だけで選ぶ前に
わたしたちは、知識がないまま近さで選びました。それが間違いだったとは思っていません。通いやすさは、続けるうえでとても大事だからです。
ただ——選ぶ前に、それぞれの病院が男性不妊にどれくらい力を入れているかを調べておけばよかったとは思います。公式サイトの診療内容や、いつからその診療を始めたかを見るだけでも、判断の材料になります。
7. その後どうなったか——検査から半年で妊娠
時系列で書きます。
| 2024年12月 | 獨協医科大学病院で男性不妊の検査 |
| 2025年1月 | 宇都宮で2回目の移植 →陰性 |
| 2025年2月 | 東京・加藤レディスクリニックへ転院 |
| 2025年5月 | 3回目の採卵で胚盤胞を凍結 |
| 2025年6月 | 妊娠判明 |
| その後 | 43歳10ヶ月で出産 |
薬はほとんど飲みませんでした。数値が改善したという話でもありません。
それでも、顕微授精という方法で、たった1個の胚が育ってくれました。
💡 いま思うこと——東京でIMSIを選べたこと
東京のクリニックでは、IMSIという方法で受精させました。精子を高い倍率で観察して、形の良いものを選んで卵子に注入するやり方です。
夫は正常形態率が2.3%でした。だからこそ、1個ずつ精子を見て選ぶ方法が合っていたのかもしれない——いま振り返ると、そう思います。
検査で数字がはっきりしていたから、次にどんな方法を選ぶかを考える材料になりました。調べておいてよかったと思うのは、この点です。
※どの方法が合うかは人によって違います。必ず主治医とご相談ください。
💬 数字は、絶望の理由ではなかった
運動率13.5%。正常形態率2.3%。DFI34.68%。
検査結果を受け取ったとき、いい気持ちはしませんでした。でもこの数字が、そのまま結論ではありませんでした。
※妊娠の経過は本当に個人差が大きいものです。同じ数値なら同じ結果になる、という意味ではありません。ご自身の治療方針は、必ず主治医とご相談ください。
8. まとめ——同じ検査結果を見ている方へ
- 男性不妊の検査は、精液検査だけではありません。形・酸化ストレス・DNAの傷まで調べられます
- 病院によって、男性不妊への力の入れ方はまったく違います。近さだけで決める前に、診療内容を見てください
- 夫が協力的でないことは、よくあります。それでも治療は進められます
- 数値が悪くても、結論ではありません。わたしたちは、この結果のあとに出産しました
男性不妊は、女性側の治療以上に話しにくいことだと思います。夫を責める話にもしたくない。だから情報が出てこないのだと思います。
でも、知らないままだと選べません。この記録が、どこかの誰かの材料になればうれしいです。
※この記事は、わたしの家族の記録です。検査値の意味や治療方針は個人差が大きく、必ず医療機関にご相談ください。制度や診療内容は執筆時点(2026年8月)のものです。